2017/07/10
業務改善

リーダーのための「時間管理」解決クリニック9「無理難題に『ノー』と言えません」

ここは時間に追われ、忙しいリーダーのために開設されたクリニック。

このクリニックには時間管理にお悩みのリーダーが処方箋を求めて来院します。

おやおや、今日もお悩み抱えたリーダーがやってきたようですよ……。

【今回のお悩み】

土屋さん(課長職)39歳

総務部で、兼任の情シス担当をしています。情シス関係の案件は、社長から直接降ってくることが多くて、部長をスルーして、直接、私に話があることが多いんです。この社長からの依頼に「ノー」とは言えないのが悩みです。

そうですね。社長のことは尊敬しています。ちょっとワンマンな感じですが、判断は的確ですし、優秀な人だと思います。ただ、妥協を許さない人ですね。報告書なども手を抜けません。

「クラウドというのを導入する価値があるか検討してくれ」「仮想化というのがあるらしいな。うちで導入すると、どんなメリットがあるか調査しておいてくれ」など、私もよく知らないことについて検討しろと言われます。

一から調べたり、問い合わせたりしなければいけないことも多いので、けっこう負担になっています。無理なことに対しては「ノー」と言いたいんですが、、言えません。社長に「君ならやれるよ」と言われると、つい「はい!」と返事をしてしまいます。一人で遅くまで残業することも多くて、引き受けたことを後悔することもあります。

直属の上司ですか? 部長も優秀な人だとは思うのですが、情シス関係のことはそれほど関心がないので、社長からの依頼に関しては知らん顔という感じです。もちろん部長からも仕事は降ってくるので、社長からの仕事と、どちらを優先すべきか迷うこともあります。できるのが期限ギリギリになることもあるので、部長にも迷惑をかけているんじゃないかと気になってます…。

※このお悩みは実際のご相談の内容を元にしたフィクションです。


土屋さん、社長から信頼されている様子ですね。それもあって無理な依頼を引き受けようとしてしまうのではないでしょうか。しかし、このように直属の上司と、さらに上の上司の両方から仕事を引き受けているという状況には問題もあります。

そもそも、二人とも土屋さんがどれだけの仕事を抱えているかを知らないはずです。もしかしたら、土屋さんがどれだけ遅くまで残業しているのかも知らずに、仕事を依頼しているのかもしれません。

本来なら、こういう状況では自分で仕事量をコントロールするしかありません。自分の身を守れるのは自分だけです。そのため、時には「ノー」と言うことも必要なのです。しかし、それができていないところが心配です。

「ノー」と言えるか言えないかは、性格的な強さだけで決まるわけではありません。やり方や考え方を少し変えてみてはいかがでしょうか。

では、対策を解説していきましょう。

【上司からの無理難題に「ノー」と言えない人の対策】

「ノー」と言えない理由

仕事を頼まれると「ノー」とは言えない…。そんな状況になってしまう理由はいろいろあります。性格的に少し弱気で断るのが苦手だったり、上司からの依頼を断ると「評価が下がるのではないか?」と不安だったり、相手に何か負い目を感じていたり。

しかし、最も大きな理由は、自分の仕事量を正確に把握していないことです。実は、私自身もそうでした。自分の仕事量を把握できてなかった頃には、無理そうな頼まれごとも「まあ、なんとかなるだろう…」と引き受けてしまいがちだったのです。でも、実際にやる段階になって「引き受けなければよかった」と後悔することが少なくありませんでした。

その後、時間管理ができるようになり、自分の仕事量を把握できるようになってくると「これは引き受けられる」「これは引き受けられない」ということが、割とはっきり予想できるようになりました。そうなると「これは断らなければいけない」という危機感が高まります。「無い袖は振れない」と分かるわけです。

そうすると、仕事を断ることができるようになりました。また、自分の仕事を把握できると、とっさに「すいません。今は○○の件で手一杯なので難しいです。来週末まででよろしければできますが」と理由をつけて断ったり、期限を交渉したりできます。単純なことですが、理由があるのとないのでは説得力は違ってきます。また、断っても相手が納得してくれやすくなります。

では、自分の仕事量を正確に把握するにはどうすればいいでしょうか? そのためには、自分の「タスク」を書きとめておくことが有効です。

仕事量を把握する

「今、自分がどれだけの仕事を抱えているか」を、とっさに、すべて正確に思い出すのはかなり難しく、現実的には不可能だと考えるべきです。

また、それらの仕事をやるためにどれだけの時間が必要になるか、実際に時間が足りるのか(間に合うのか)を頭の中で判断するのは、さらに難しいことです。自分の仕事量を把握するためには、タスクを書き出して“可視化”することが必須です。

下の図は、簡易的なやり方でタスクを入力した例です。上段(アポイントメントの上の欄)には数日間に渡る予定を入力してありますが、これが時間のかかるタスク(1日では終わらない仕事)を表しています。

例えば、「(少し余裕を見て)これは1週間ぐらいかかりそうだ」と判断したら、開始日、終了日を仮決めをして、その期間の予定として入力します。タスク管理としては、かなり大雑把なやり方ですが、これだけでも自分が抱えている仕事の状況が分かりやすくなり、新しい仕事を引き受けても大丈夫かを判断しやすくなります。無理だと判断したら断る、あるいは期限などを交渉しましょう。

より正確に仕事量をつかみたい場合は、これらの仕事をより小さい複数のタスクに分割し、それぞれを実行日に入力していくのがおすすめです。しかし、最初からそこまでできなくても構いません。まずは、大まかな状況だけでも入力しておきましょう。

「ノー」が評価につながることも

土屋さんのケースでは、もう1つ気になるところがあります。尊敬できる社長から直接仕事を依頼されるのは、やりがいがあると思います。しかし、だからこそ「ノー」と言えなくなっているのではないでしょうか。「君ならやれるよ」と言われて、押し切られているのも、ちょっと気になります。

上司のことを尊敬できるからこそ、その上司から評価されたい。そういう気持ちがあるのは自然なことです。ただ、何でも引き受けることが評価につながるとは限りません。少し考え方を変えてみてはどうでしょうか。

例えば、自分にこういう部下がいたとします。

頼んだことは何でもすぐ引き受けてくれるが、どうも仕事をため込んでいて、かなり遅くまで残業しているようだ…。この部下のことをどう思いますか?

「積極的だ」「がんばっている」という良い面がある反面、「無理しすぎ」「ちょっと心配だ」「働き方改革と言われているご時世にそんなに残業するなよ」とも思うのではないでしょうか?

逆に、無理な場合には「できない」と言ってくる部下はどうでしょう? 「生意気だ」「消極的だ」と思う人もいるかもしれませんが、「しっかりしている」「自己管理できている」という印象もありますよね。

「何でも引き受ける」という姿勢でいることも立派だとは思いますが、逆に、自分の仕事の状況を把握していて「できないことはできない」と言えることも、私はとても立派なことだと思います。

無理なことを引き受けて後で迷惑をかけるよりも、「できないことはできない」と言う。そのかわり、やると言ったことは期限までに必ずやる。そういう姿勢の方が、より高い信頼が得られることもあります。

「ノー」と言うことが、逆に評価につながることもあるのです。そもそも土屋さんはもう若手ではありません。ただ「がむしゃら」にやればいいというわけではないですよね。断るべきことを断るのはあなたの責任なのです。そう考えてみると、少し「ノー」と言いやすくはなりませんか?

最後に、ノーと言えずに、仕事を引き受けてしまって困っている人への処方箋を出して今回の診察は終了です。

【上司からの無理難題に「ノー」と言えない人の対策】

■まずはタスクを書きとめて、自分の仕事量を把握しよう
■具体的な理由とともに、断るべきことは断ろう。それが無理な場合も期限は交渉しよう
■無理に引き受けても「積極的」という程度の評価しか得られない。無理なことは断って「自己管理できている」という評価をもらおう

水口 和彦(みずぐち・かずひこ)

大阪大学大学院修士課程修了。住友電気工業株式会社でエンジニアとして勤務するなかで時間管理を研究し、残業を大幅に削減。その経験を活かし2006 年に独立。数少ない「時間管理(タイムマネジメント)専門講師」として、数多くの企業や自治体、教育機関などで研修や指導を行い、早稲田大学エクステンションセンターの講師も務める。『部下を持つ人の時間術』(実務教育出版)など時間管理に関する著書多数。「まぐまぐ」よりメールマガジンを毎週配信中。http://www.mag2.com/m/0000190033.html


所属:有限会社ビズアーク/時間管理術研究所
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